独立系システム


1.太陽光発電システムを考える前に

太陽電池は発電に関して、いろいろな特性を持っています。それらの特性を理解しシステムを設計する事により安定したシステムを構築することができます。

1)出力仕様
 カタログなどに表示されている出力値は、次のような一定の基準により測定した値で表しています。

基準状態:モジュール温度25℃、分光分布AM1.5、放射照度1000W/u

これらの意味は

モジュール温度
太陽電池モジュールは温度が上昇すると発電電圧が下がり、また、冷えると発電電圧が上がるという特性を持っています。そのため一定温度で測定しないと比較になりません。そこで25℃の温度を基準状態とし、その時の出力特性を表しています。しかし実際には25℃で一定して使用することはできません。モジュール温度は、周囲の環境や日射条件などにより大きく変化します。
分光分布
光にもいろいろあります。たとえば朝日や夕日は赤い光が多く、日中は青い光が多いと感じられると思います。太陽電池は光に反応して発電しますが、その光の色(波長)により感度が違ってきます。そのためどのような波長分布の光を当てるかを規定しています。太陽光は大気層を通過することにより大気中のオゾンや水蒸気などにより、光の一部が吸収されます。大気の通過距離が長いと青い光が吸収され赤く見えるのはそのためです。ここで表すAM(Air Mass:エアマス)とはその大気通過量のことでAM1.0とは光の入射角が90度(真上)から入射した光を意味し、AM1.5はその通過量が1.5倍(入射角41.8度)での到達光を表しています。

放射照度
1u当たりに到達した太陽光エネルギーの強さを表し、単位は(W/u)を用いています。大気圏外ではおおよそ1400W/uある太陽光エネルギーも大気を通して地表に到達すると1000W/u程度になります。この1000W/uという値を、放射照度の基準状態としています。しかし、実際には通過大気量が長くなったり、雲等の影響で弱められたり変動したりします。

2)太陽電池の特性

電流-電圧特性(I-Vカーブ)
太陽電池の発電特性は電流-電圧特性(I-Vカーブ)によって表せます。これは太陽電池からの発電電流とその時の電圧を表した物で、太陽電池に負荷を接続した場合、このカーブ線上で動作する事になります。乾電池など通常の電源では比較的電流容量が大きいため、使用に関しては電圧は一定と考えられ使用されますが、太陽電池の場合は発電状況や負荷により大きく電圧、電流が変化します。

温度特性
太陽電池モジュールは外気温や日射によりモジュール温度が上昇すると発電電圧が下がる特性を持っています。その低下率は太陽電池の物性により異なりますが、結晶系では1℃温度が上昇すると約0.4%低下します。(温度が下がると電圧は上がります。)そのために太陽電池を設置する時はできるだけ温度が上昇しないように配慮しなければならないとともに、設計上でも温度による電圧低下を考慮し、システムの設計をする必要があります。
放射照度特性
受光面の放射照度(日射強度)が変化するとその強さに比例して発生電流(短絡電流)が変化し、それにともない出力電力も変化します。放射強度は天候に大きく依存します。そして、太陽電池の設置方向や設置角度により、受光面での放射強度もかわります。そのために、太陽電池が最適に動作できる設置状態にも配慮が必要になります。

2.システムの検討

1)日照データの把握(簡便法)

 日本の年間日照時間は1500-2000時間です。1日当たりの平均日照時間にすると、4-5.5時間です。一般的な地域における経験として発電に利用できる時間は、1日当たり平均2.6-4時間(日射量1000W/uに換算した場合)とみなすことができ、これを有効日射時間といいます。ここでは中間の値をとって3.3時間を1日の充電時間とします。

2)負荷の把握

 負荷とは、TV、蛍光灯やポンプなどの電気製品のことです。大きく分けて負荷の使用条件は、バッテリー等の直流(DC)で使用するものと、家庭用のコンセントで使用する交流(AC)があります。負荷を把握するということは、まず、この交流と直流の別、使用電圧(V:交流では使用周波数も把握)、消費電流(A:消費電流がわからない場合は出力W)、そしてこれらの電気製品を使用する平均使用時間(h)などを把握することです。それぞれ負荷の使用電流と平均使用時間がわかれば、1日当たりの平均使用電流量(Ah/D)を求めることができます。

負荷を把握するための項目 使用電圧(V:直流or交流:交流は周波数も) 消費電流(A) 消費電力 出力(W) 1日の平均使用時間(h)
各々の負荷 a b c d

1日あたりの平均消費電力量(Ah/D) = 消費電流(A) × 平均使用時間(h)
                          = b × d

ポイント1 使用を予定している各々の負荷について計算し、合計してください。
ポイント2 消費電流の値が不明の場合は、以下の式で計算してください。

消費電流(A) = b = 消費電力(W) ÷ 電圧(V) = c ÷ a

3)設置場所の状態把握

 システムをより厳密に設定するためには、設置場所の様々な自然条件(日射量、気温等)をつかみ、標準値を補正して使用します。


では次に、直流12Vで利用できる家電製品を利用するための独立系太陽光発電システムの大まかな設計と計算方法について説明しましょう。


3.システムの計算例

ここでは、直流12Vで利用できる家電製品を利用するための独立系太陽光発電システムの大まかな設計と計算方法について説明します。

例として、以下のように使用条件を設定してみます。

1)11Wの蛍光灯1本を1日3時間
2)30Wのテレビと20Wのビデオをを1日2時間
3)連続無日照日が5日続いても稼動するシステムとしたい。


1.電気製品の消費電流の計算

蛍光灯
 蛍光灯具をよく見てみると消費電流が書いてありました。 1.1Aです。
 蛍光灯は交流で点灯しますので、蛍光管が11Wであっても、蛍光灯器具の中には直流を交流に換える小さなインバータが取り付けられています。
 そのインバータの変換効率を加味した表示になっていることがわかります。

テレビとビデオ
 これには消費電流が表示されていませんので、各々計算してみましょう。
 30W ÷ 12V ≒ 2.5A     20W ÷ 12V ≒ 1.7A

消費電流が求められましたので、次の表を埋めて1日当たりの消費電流を求めます。

電気製品 消費電流   1日あたりの使用時間   1日当たりの消費電流
蛍光灯 1.1A × 3h/D 3.3Ah/D
テレビ 2.5A × 2h/D 5.0Ah/D
ビデオ 1.7A × 2h/D 3.4Ah/D
          合計 11.7Ah/D

2.太陽電池の必要発電電流の計算

次は、11.7Ah/Dという消費電流をまかなうことができる太陽電池の必要電流を計算してみましょう。

太陽電池の1日当たりの必要発電電流量(Ah/D) =

平均的な1日の消費電力量(Ah/D) ÷ 出力補正係数 ÷ バッテリー充放電損失補正係数 ÷ その他の補正係数

で、求められます。

出力補正係数
気象の変化、太陽電池表面の汚れや経年劣化などによる太陽電池出力の補正のことで通常0.85という値を使います。
バッテリー充放電損失補正係数
バッテリーの充放電効率(Ah効率)にともなう係数のことで、通常0.95という値を使います。
その他の補正係数
他にシステムとして動作させる上でのロス(損失)となるもので、例えばインバーターの変換効率は通常0.75-0.85です。

ここでは、出力補正係数に0.85を、バッテリーの充放電効率にともなう補正係数に0.95を上記の式に代入してみました。

太陽電池の1日当たりの必要発電電流量(Ah/D) = 11.7(Ah/D) ÷ 0.85 ÷ 0.95 ≒ 14.5(Ah/D)

太陽電池の1日当たりの必要発電電流量は14.5Ah/Dと計算で求めることができました。

3.日照データの把握(簡便方)

日本の年間日照時間は1500-2000時間です。1日当たりの平均日照時間にすると、4-5.5時間です。一般的な地域における経験として発電に利用できる時間は1日当たり平均2.6-4時間(日射量1000W/uに換算した場合)とみなすことができ、これを有効日射時間といいます。ここでは中間の値をとって3.3時間とします。

14.5Ah/D ÷ 3.3H/D ≒ 4.4A

太陽電池の出力電流は4.4Aか、またはそれ以上あれば良いということがこの計算からわかりました。

4.太陽電池の電圧

夜間の電流の逆流を防止するために太陽電池とバッテリーの間に逆流防止器を取り付けます。この逆流防止器(ダイオード)を取り付けることによって電圧は下がってしまいます。この電圧ドロップを加味して計算式を作りますと次のようになります。

太陽電池の最大出力動作電圧 = バッテリー公称電圧 × 満充電係数 + 電圧ドロップ

バッテリー公称電圧
バッテリーに記載されている電圧(ここでは12V)
満充電係数
鉛蓄電池の場合 1.24
電圧ドロップ
通常シリコン整流ダイオードで 0.7V

それぞれの値を式に代入してみましょう。

太陽電池の最大出力動作電圧 = 12V × 1.24 + 0.7V = 15.58V

太陽電池の最大出力動作電圧は15.58V以上あればOKと言うことがわかりました。

5.太陽電池の選定

太陽電池の最大出力動作電流(4.4A)と最大出力動作電圧(15.58V)が求められました。太陽電池の一覧表から最適な太陽電池を選びます。ここでは、昭和シェル石油の、型式GT133太陽電池を2枚並列に使う事にします。

GT133を2枚並列に接続すると、
最大出力動作電流 3.15 × 2 = 6.30A
最大出力動作電圧 15.9V

システムの電圧を上げるために直列に接続する、または電流を上げるために並列に接続してご使用になる場合には、同型式の太陽電池をご使用下さい。

6.バッテリー容量の計算

さて、まだバッテリーの計算が残っています。ここでは、雨などで5日間連続で日照が期待できない日が続いても支障のないシステムを考えてみます。1日当たりの平均的な消費電力量の5日間分をバッテリーに蓄えてバックアップすることになります。次式に代入してバッテリー容量を求めてみましょう。

バッテリー容量(Ah) ≧ 1日の平均的な消費電流(Ah/D) × 連続無日照保証日数(日:D) ÷ 鉛バッテリーの保守率

バッテリー容量(Ah) ≧ 11.7(Ah/D) × 5(D) ÷ 0.8
             ≧ 73.1

よってバッテリーは73.1Ah、又はそれ以上の容量が必要だということがわかりました。
バッテリーメーカーのカタログに12V80Ahというものがありましたので、それを使用することにします。

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